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正倉院所蔵 越後・佐渡國産の布製品

みなさんこんにちは学芸員Aです。

正倉院に新潟県(越後・佐渡国)産の布や、その布を使って作った製品が収められていることをご存じでしょうか。

近年、正倉院に収蔵されている日本最古級の布等が次々に分析され、新たな発見が相次いでまして、上記の布が含まれていましたので、ご紹介します。

2018年の調査報告(正倉院紀要第40号参照)をみると、越後國(えつのみちのしりのくに)のものが3点、佐渡國(さどのくに)のものが3点あって、ともに1点ずつが既知の資料に追加された資料でした。産地は国印や墨書からわかります。

■越後國(1点)

越後産は、追加資料1点(AD750年)について素材と色料の分析がなされました。
その素材は苧麻。織りの密度は並(経糸10~11本/cm)でした。

分析試料のリストには上総國(かずさのくに。千葉県中部。)産もあり、こちらは16~22本/cm。密度が高いほど上質です。上総は最上級の布を産出する地域として当時有名でしたから、やっぱりといいますか、比べ物になりません。ちなみにこの調査で明らかになった最も密度の高い布は、経糸39~41本/cm(産地不明)。目玉が飛び出る最高級品だったことでしょう。

正倉院収蔵品に限らず、8世紀の文献上に出てくる国別価格の比較においても、越後産は同じように並です。だからこの分析で一層証拠が固まった感があります。後の時代に知られるようになる越後の布(苧麻製)は、このころはまだ普通の布だったのです。ブランド化の足跡は15世紀初めまでは遡れますが、それ以前のことはまだよくわかっていません。

色料の分析では、摺絵と國印にベンガラが含まれていることが推定されました。取り立てて考えたこともありませんでしたが、ベンガラは縄文人も良く使っていました。奈良時代でも赤色の顔料として一般的に使われていたことに率直に感動しました。

なお、かねてより有名だった「越後國久疋郡夷守郷戸主肥人呰麻呂庸布壹段」と書かれたものは分析されてなくて、いまもって不明のままです。残念。

■佐渡國(2点)

佐渡産は追加資料1点を含む2点について素材が分析されました。
1点は以前より知られた「佐渡國雑太郡石田郷曽祢里戸丈部得麻呂調布壹端」などと書かれた白布です(AD739年)。断面観察では「イラクサに似る」とされましたが、側面観察では「不明」でした。経糸11本/cm、これも並です。

もう1点は、白地錦几褥(錦の机上敷物)という製品で、密度は14~18本/cmと少し上質でした。実は以前から佐渡産は上質の部類に入ることが知られており、ここでも同じ結果といえるのかもしれません。

最近は沢山の研究者の努力により調査が重ねられ、古代から中世の織物について思いのほか色々と分かってきたようです。がぜん興味がわいてきました。

学芸員A